SEMENTOS -文読む月日-
遅れてきた青春でも、遠い過ぎ去ってしまった青春でもない。
SEMENTOS結成10年目に発表された2nd full album”文読む月日”は藤村JAPANのまさに現在地と言えるだろう。
気だるいブルースを纏ったギターがM1”けもの道”の始まりを告げると淡々とだが確かに言葉を届けてゆく。M2”合言葉"では誰もが自分だけ抱える過去の失敗や後悔、M3”百鬼夜行”は現状の憤りや諦めにも似た冷笑を履き捨てるように紡ぐ…こんな具合で最後まで曲に対するレビューを書いてもいいのだが抽象的にしかならないのでやめておきたい。
アルバムを繰り返し聴く中で、わかった事がある。
(ギターリフが素晴らしいことや、スリーピースの完成度じゃないことや声がカッコいいことは皆わかってるだろうし割愛)
それは「誰もが”私事”で、誰もが”他人事”であるように思える哀しみを歌にしていること」だ。
この抽象的だが確かな哀愁こそが、飄々としつつ誰もが燻っている心の機微を捉えてしまう藤村JAPANの現在地であると勝手ながら感じた。
決してそれは無責任ではなく、俺たちを笑うわけではなく。ポジティブに、このたわいない悩みも過ぎた話も受け止めてくれる。
SEMENTOS、藤村JAPANの生き様が詰まった本作が顔も知らない誰かの今に届くことを願って。
駄文、散文、与太話失礼しました。
Reviewed by Kai Yoshida
1. けもの道
2. 合言葉
3. 百鬼夜行
4. 与太話
5. どんと構えて
6. 震える程に
7. 文読む月日
8. プログラムされた蟻
9. まぼろし
10. 歯車